第18章 それぞれの想い
「エルヴィン、お前犯人の目星が付いているんじゃねぇのか」
エルヴィンは答えない。
答えないということは、やはり思い当たる人物がいるのだろう。
「おい、言えよ」
「…いや、エマに話を聞いてからだ」
エルヴィンは表情を変えず言った。
俺が今にも犯人と思しきヤツを殺しに行きかねないとでも思ったんだろう。
程なくして、医師がエマの意識が戻った事を知らせにきた。
エルヴィンは団長という立場上エマに会わなければいけないが、俺が会えるかどうかはわからない。
「あぁ、来たね。エマは落ち着いてるよ。
彼女は緊急避妊薬の服用を希望している。
医師が後から届けると言っていた。
とりあえずエルヴィンと話をしないといけないのは理解しているから入って。
リヴァイも知っていることは話したけど…今はエルヴィンだけの方がいいかな」
俺は部屋の外で待機することにした。
仕方ない。男に乱暴された後だ。
男をあまり見たくないだろう。
その気持ちは男の俺でも察する事ができた。
エルヴィンが入室し、会話が少し漏れ聞こえる。
「エマ…すまない。あの時犯人を捕まえておければこんなことにならなかっただろう。
緊急避妊薬の服用希望だと聞いたが、副作用の説明も聞いただろう。
三日から一週間、体調をみて休むといい。
無理はしてくれるな。君は大事な仲間だ。
……それと、これは言いにくいかもしれないが、犯人はわかるか?」