第18章 それぞれの想い
「んなっ……」
オイオイオイオイ…
なんだこれは。
クソが…
どういう状況だ。
今回の夜会は宿泊せず兵舎へ帰ったので、早朝の自主訓練の為に屋外訓練場へ出ると、いつも閉まっている筈の物置が開いていた。
何故か嫌な予感を感じ確認しにいくと、今回は明らかに事後だろうと判断のつくエマの姿があった。
着ていた兵服のジャケットを脱ぎエマにかける。
「おい、エマ!大丈夫か!?」
事が事だ、大声になり過ぎないように声を掛けた。
返事がない。
物置にあった適当な布でエマを包み、早朝とは言え人目につかないよう自室まで運んだ。
医務室に連れて行く選択肢もあったが、医務室は人の出入りが全く無い訳ではない。
俺の自室で兵団付の医師とエルヴィン・ハンジだけに事の次第を説明した。
「先ずは私が話をしてみるよ。その…なんていうか…状況的に女性の方がいいだろうしね…」
ハンジが重い口を開き提案した。
一旦俺とエルヴィンはエルヴィンの執務室へ行き、頃合いを見計らいエマの元へ訪れる段取りとなった。
医師によると、以前盛られた同じクスリが今回も使用されている可能性が高いこと、膣口に亀裂が数箇所あること、複数回射精された痕跡があること、が診断された。
「おい、エルヴィン。これは前回と同じやつの仕業じゃねぇのか。前回あのまま放置してた結果がこれだ」
「あぁ。そうだろう。だが、憲兵もあれだけの状況証拠では犯人までは特定出来ないと結論付けた。エマ自身の記憶も曖昧だったからな」
クソっ…
もっと気を付けておくべきだった。
エルヴィンが表情を変えずに説明した。
憲兵がクソの役にも立たないことをわかってはいたが、怒りは抑えられなかった。
だが俺より頭の回るエルヴィンだ。証拠はなくとも目星くらいは付いているかもしれない。