第1章 出会い
ハンジさんから号令がかかる。
立体機動装置で森を駆け抜ける。
訓練兵時代には様々な訓練を受けてきたが、私はこの立体機動装置の訓練が一番好きだ。
自分が鳥になった気になり、重力に逆らうのもすごく解き放たれた気分にさせてくれる。
実際は体幹への負荷や身体中に圧がかかるのでそんな悠長なことは言ってられないのだが、いつも一瞬自分が鳥になった妄想をするのだ。
教官に気づかれたらどやされるどころでは済まないので、あくまで外から見てもわからないようにしながら…だが。
三体の巨人の模型を確認し、身体を回転させ連続してうなじ部分にあたるクッションをそれぞれ一撃で削ぎ、見ていたハンジさんたちのところに戻った。
「ヒュー!エマすごいねぇ!まるでリヴァイを見てるみたいだよ!そっくりだね!」
ハンジさんからそんな言葉を掛けられる。
リヴァイ兵長と似てる…?
もしかして…
「おい、お前…。動きは悪くねぇが…
途中一瞬だが別のこと考えてただろ。上手く隠してるつもりか知らんが俺にはわかる。命取りになるからその癖を直せ。お前一人が巨人のクソになるのは構わんが、他の兵士の足を引っ張ることになる」
なっ…今まで誰にも気づかれたこと無かったのに…
「はっ!ご指導ありがとうございます!」
周りに悟られないよう、しっかりと敬礼し平静を装う。
…今まで誰にも気づかれなかったしハンジさんだって気づいていなかった様子だったのに…
さすがは人類最強か…
リヴァイ兵長は踵を返し別の班の訓練の様子を見に向かった。