第11章 ●罠●
所在無くバルコニーでボーッとしていると、飲み物を持った男性が近づいてきた。
若いし、この身体つきは兵士?憲兵団か?
男性が二つ持ったグラスの一つを差し出し、
「こんばんは、良かったらお一つご一緒できませんか?」
「ありがとうございます、けど私アルコールはダメなので」
と断ったが、
「こちらはアルコールは入っていませんよ、私もアルコールはダメでして」
と、人の良い笑顔で勧められ一口飲む。
たしかにアルコールは入っていない。
そういえばこの人、レイドに少し似てるなぁ。とふと懐かしい気持ちになった。
他愛ない話をしながら二口、三口と飲み進めると視界がぐらりと歪んだ。
脚の力が抜け、膝から倒れそうになった瞬間男性に抱えられ小さな声で大丈夫ですか?と聞かれる。
「あれ?すみませ…なんで…」
すると耳元で、
「これねアルコールは入ってないんですよ、特別なクスリは入ってますが…」
と聞こえ愕然とした。
だが時すでに遅く、夜会の賑やかな音楽も声も遠のいていった…