第11章 ●罠●
「すみませんっ!お待たせしました!」
小走りで団長と兵長の待つ馬車へ向かう。
慣れない靴と服なので気持ち程度にしか早くなっていないが。
「ほう……悪くない」
「エマ、素敵だな。
君の銀色の髪にロイヤルブルーのドレスが似合っているよ」
リヴァイ兵長は言い方が独特だがこれでも褒めていて、エルヴィン団長の相変わらずのスマートな褒め言葉に恥ずかしくなった。
団長も兵長も正装しており、いつもの兵服とはまた違って凛々しく美しかった。
エルヴィン団長は、長身・金髪碧眼・加えて程よい逞しさに紳士的な魅力。
リヴァイ兵長は、小柄だがサラサラの黒髪・涼しげな三白眼、人類最強の引き締まった身体に少し危ういような雰囲気。
しばらく意識していなかったが、この兵団のツートップは貴族のご婦人方に大人気なのだ。
馬車に揺られている間は主に私とエルヴィン団長で、夜会に駆り出されて不機嫌なリヴァイ兵長を宥めることとなった。
夜会に着くと、たくさんの貴族たちに挨拶回りをした。
それもひと段落すると、エルヴィン団長・リヴァイ兵長は貴族のご婦人方に囲まれていた。
私は特に何もしなくていい、話しかけられたら適当に話をしてやれば良い、とだけ言われていた。
新参者の私をずっと相手にする程には貴族たちも暇ではないらしく、最初は多少ちやほやされたがすぐに暇を持て余した。