第9章 初陣の傷跡
帰還後、エマの様子を見にきたものの、ハンジと話し込んでるようだ。
盗み聞きは趣味ではないが、扉を隔てエマの昔話に耳を傾けた。
エマの出自については自分と似たようなところがあると思ったが、地上に行ってからも地獄を味わったエマより、仲間に恵まれた自分の方が遥かにマシだと思った。
話が終わったようでハンジが出てきた。
「なんだ心配なら入ってくれば良かったじゃん。
エマなら眠そうだったからまた寝ると思うよ」
「珍しくアイツが自分のことを話してたからな。
それもお前だからだろう。まぁいい、また見にくる」
そう言った手前、一旦執務室へ戻った。
手の中にはレイドの自由の翼の紋章がある。
これをエマに渡すべきかどうか。
恋人じゃねぇとは言ってたが、自分の代わりに死んだ奴のモノを貰っても追い詰めるだけにならないだろうか…。
色々考えたがやはり結論が出ず、行き場を失ったままポケットにしまわれた。
そろそろまた目を覚ます頃か。
寝てたとしても起きるまで待てば良い。
アイツの顔を見ないと。
そう思い、また医務室へ向かった。