第9章 初陣の傷跡
「そっか。あの傷は訓練で出来たんじゃなかったんだね。
髪も金髪だったのか〜、見てみたかったな〜!
今の銀髪もクールでエマにとても似合ってると思うけどね!」
さすがハンジさんだ。
普段は巨人のことを語ってばかりだけど、聞き出し方と和ませ方はさすが分隊長を務めてるだけある。
私は続けた。
「レイドは…訓練兵の時に知り合いました」
私は自分の出自を知られたくなくて、基本的に他人と距離を取っていた。
兵士には向いてると思った。
身体能力も何故か群を抜いて高かった。
壁の外へ出て、しがらみや他人と極力関わりなく生きたいと思った。
鳥にはなれないが、立体機動装置で鳥になったように自由な気持ちになれた。
もし、巨人に食われたとしても誰も悲しませることもない。
そう思って過ごしていたが、レイドはどんどん話しかけてきてレイドとだけは良く話すようになった。
レイドは不思議と相手に壁を作らせない人だった。
家族とも仲が良いようで、私は彼の話を聞いて朧げに母を思い出したり、普通の家庭というのはこういうものかと新鮮に思った。
彼は模範的な兵士で誰からも好かれ頼られていた。
「ハンジさん…レイドは…こんな無愛想な私にも優しくしてくれました。
仲間でいてくれました。
…私のことを好きだと言ってくれました…
レイドの夢はリヴァイ兵長の下で働くことでした。
精鋭の仲間入りするんだって。
私よりもずっと…人類の役に立つ人なのに…」
しばらく二人の間に沈黙が流れた。
「そっか…色々話してくれてありがとう。
…私も…調査兵団に入ってからは別れの連続だ。
慣れることは無いけど、亡くなった仲間達の為にも前に進まなければならないと思うんだ。
…レイドも、エマに『生きろ』って言ってたよね。
私もまたエマと一緒に前を向きたいんだけど…どうかな?」
「ハンジさん、ありがとうございます…。もう、大丈夫です。調査後でお忙しいのに。早く身体を治して復帰します」
そう言ってハンジさんを見送った。
長々と話し過ぎた。
眠気が襲ってきたのでそのまま目を瞑り眠りについた。