第9章 初陣の傷跡
きっと他にも負傷者や戦死者がいるはずだが、私が目を覚ますまで側に付いててくれたんだろう。
「ハンジさん、ありがとうございます。
あと、あの時取り乱してすみませんでした…。
私ハンジさんまで巻き込もうとして…」
「エマ、元はと言えば私の判断が甘かったんだ。
伝達でもう一体いるはずだったのに撤退の命令を出した。
すまなかった…」
いつも陽気なハンジさんが悔しそうに言う。
だが、違う、違うのだ。
「ハンジさん!やめてください!
あれは、あれは…私が…」
絞り出すように言った。
「…兵長から注意されてたのに…別のことを考えてて…。
それで、レイドもハンジさんまで…」
私のせいだ。私のせいでハンジさんも危険に晒し、レイドは帰らぬ人となった。
命と向き合う覚悟はあったつもりだった。
だがそれは自分の命に対してだ。
仲間の命に向き合う覚悟は私には無かったのだ。
自分のあまりの不甲斐なさに涙も出そうにない。
ハンジさんは私の頭を撫でながら
「レイドくんはエマの恋人だったのかい?」
唐突な質問に、ビックリした。
「ハンジさん、違いますよ。
私には恋人はいません。けど…仲間でした。
彼はとても優しくて勇気があって…尊敬していました」
「あのさ、彼のこともだし、エマのこと…話してくれないかな?」
私が自分のことを話したがらないのは知って、敢えてこのタイミングで聞いてきたんだろう。
多分、本当に私のことを思って。