第2章 ●嬌声●
「いけません、エルヴィン団長!私がやります!」
「いいんだよ、エマ。
ちょうど飲もうとさっき多めに作ってたところなんだ。座っていなさい」
言われた通りにお茶が出されるのを待ち、目の前に茜色の飲み物が差し出された。
エルヴィン団長と横並びにソファに掛けてお茶をすることになるとは…
エルヴィン団長は勧誘式の勇ましい印象とは180度違い、とても優しく柔らかい雰囲気で話し始めた。
「ビックリしたか?多分明日兵団を去る女性兵士だろう。
珍しい話では無いんだよ。最後に一回、思い出に抱いてくれってね」
「…団長もそういうご経験がおありなんですか」
あぁ、まだ私の思考回路はダメみたいだ。変なことを聞いてしまった。
「そうだな、私のところにも無いわけではない」
そうだろう。団長としてのカリスマ性もあるし、貴族のご婦人方を虜にしてやまない金髪碧眼の長身…
調査兵団のツートップは実力もさることながら見目麗しい。
次の言葉が出ずに紅茶を啜っていると、
「10代から30代で主に構成されている調査兵団内で恋愛ごとが無いわけではないが、私もリヴァイも特定の人がいないからな。
というよりそういった退団するような後を引かない相手の方が我々にとっても都合が良い。
…ガッカリしたか?」
そうだ…調査兵団にいる以上明日の約束ができない身。
特に団長や兵長は敢えて特別な人を作らないんだろう。
特別な人がいることで強くなれる者もいるだろうが、二人は一般兵と違い責任ある立場だからその時々の判断に支障が出ないようにとのことだろう。
「いえ…調査兵である以上はお二人の判断が正しいと思います。私も特定の人などおりませんし作るつもりもありません。この心臓は既に公に捧げました。
リヴァイ兵長には下世話な真似をしてしまい、エルヴィン団長にもご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした」