第2章 ●嬌声●
「さ、出来ましたよ、しっかり浸かって温まってください」
二人でしばらく湯に浸かった後、ハンジさんは幹部棟の自室へ、私は一般兵用の相部屋へと別れた。
幹部は執務室と個室が与えられる。もっともハンジさんの場合はベッドがあるか無いかくらいしか差がなくなってしまってるらしいけど。
別れた後ふと手元を見るとハンジさんの石鹸を持ったままなのに気がついた。
明日でも良いだろうがまだ別れて間もないのですぐに渡しに行った。
案の定ハンジさんはまだ休んでおらず、パッと渡して自分の宿舎に戻ろうと廊下を歩いていると…
「んっ…あ…へい…ちょっ…」
身体が固まって動けなくなった。
声の出どころはリヴァイ兵長の執務室の筈だ。聞いてはいけないものを聞いてしまった…
…いや、リヴァイ兵長だって大人の男性だし時間外に何をしようと関係ない…
別に私だって男女がなにをするか知らないわけではない、訓練兵時代も同期のアリバイに協力したりもした
でも…でも…
頭が変に速度を持って回転するものの考えることはトンチンカンなことばかりで脂汗ばかり出てくる。
心臓がとんでもない速度で脈打っていた。
すると突然誰かに肩を叩かれ、飛び上がりそうになった。
「っっっ!!!…だんちょ…」
エルヴィン団長はシーっと声を出さないよう促し、ついておいでというジェスチャーをした団長の後を付いていく。
エルヴィン団長は自身の執務室に招き入れてくれた。
「すまなかったな、驚かせてしまって。まぁソファに掛けなさい。お茶でも入れよう」
笑顔でそう話すとカチャカチャと準備をしだした。
まだ思考回路はイマイチ万全では無かったが新兵が団長にお茶を入れてもらうなんて以ての外である、ということは遅ればせながら気がついた。