第23章 ●優しさ●
私の返答を待たずにキスが落ちてきた。
優しく温かい、唇の温もりを確かめるような触れるキス…
その心地良さに身を任せてしまっていた。
ハッと我に帰る。
「っ!団長…ダメです…。私は…」
「リヴァイと何かあったのか?」
「え……?」
何かあったかと言われると実際何もなかった。
ただ愛し合う者同士の触れ合いを見てしまっただけだ。
けど…胸が…苦しい…。
「兵長…が、レイラとキスをしているところを…
見てしまって…その…私、関係ないのに…」
言葉が支離滅裂だ。
「エマはリヴァイが好きなのか?」
兵士に恋愛などいらないと思っていた。
兵長とは身体の関係が一時あったが、それも理由あってのことだった。
けど、いつからだろう、目で追い、側にいられるだけでどこか幸せな気分になっていた。
だが、兵長にはレイラがいて、それはどうしようも無いことだ。
これまで自分が気付かないように自ら心の奥底に沈めていた感情が、エルヴィン団長の一言で溢れ返ってしまった。
コクリと頷き、
「けど、兵長にはレイラがいます…仕方ないんです」
団長は私の目をしっかりと捉えて、
「さっきも言ったが、俺ではダメか?
確かに俺は人並の幸せを君に与える事は出来ない。
だが、こうして君を悲しませる事もしない」
団長の逞しい腕は、優しく、力強く、私を抱きしめた。
「団長、ダメ…なんです。
私、ご存知の通り綺麗な身体じゃないですし…
団長に言ってない事もたくさんあります…
私は団長には相応しくないんです…
…兵長にだって…。私などに相応しい人がいると思いません…」
私がクスリを盛られた時に兵長に抱かれた事や、フロイドに乱暴された事は団長は知っているが、その後もフロイドと関係があった事までは兵長しか知らない。
それを説明したいという気持ちにもなれない。
そこまで団長に向かい合えない。
「エマ…俺はそのままの君でいい。
俺だって君に話していない事がある。
リヴァイの事を想ったままでもいい。
それでもいいから俺に頼って欲しいし俺を頼らせて欲しい」