第23章 ●優しさ●
翌日、兵舎へ戻りエルヴィン団長に報告に上がった。
「ふむ、物質の分は緊急性の高いものから優先して揃えるとしよう。二人とも、ご苦労だったな。エマ、今日はこのまま残って手伝ってくれるか?」
そう言われて、私だけが残り団長の手伝いをした。
団長の机の上は結構な量の書類で溢れていたが、そうして仕事が出来るのは丁度良かった。
昨晩レイラと兵長のキスを見てから、何をするのも集中出来ない。
何故だろう。以前も兵長の部屋から嬌声を聞いたことがあったが…その時は今ほどでは無かった…
レイラは退団の予定は無いはずだ。
すると、あの二人は付き合っていたのか…
レイラは美人で女性らしい。兵長にはお似合いだ。むしろ私のクスリの件の時は大丈夫だったのだろうか…
特定の人が居ないと聞いていたが、あの時は大丈夫だったのだろうか…
結論の出ない問を悶々と考えながら作業をしていると、
「エマ、何か考え事か?」
「いえっ…なんでも…」
そう言って顔を上げると、エルヴィン団長はひどく驚いた顔をしていた。
気がつくと、私の頬を涙が伝っていた。
「…あれ?やだ…、すみませ…」
私の言葉を遮り、エルヴィン団長が私を抱き締めてきた。
「エマ…二人きりの時にその顔はダメだ…」
耳元で心地良い低い声が囁く。
「俺では君を慰めてあげる事は出来ないのか?俺ではダメか??」