第19章 神の遣わし導き子
ロック鳥の村を後にしたおそ松たちは川沿いを歩いていた。
「何か聞こえる」
カラ松の言葉にビクッとなるおそ松たち。
「まさか、また風の音?」
「いや、今度は歌声だ」
「歌声?」
「それってさ、女?男?」
「女だ」
しばらく行くと、確かに歌声が聞こえてきた。綺麗な、と言うよりかわいい歌声だ。
やがてその歌声の主がいた。岩に腰掛けて足をブラブラさせながら歌っている。その女性はおそ松たちに気づくと、駆け寄って来た。
「もー、遅いー!どれだけ待ったと思ってるの?!」
「はぁ?!」
その女性に一松が突っ掛かった。
「何、お前。俺たち頑張ってここまで来たんだぞ!」
「まあまあ、一松。待ったって、君は一体誰?」
「私はファイアードラゴンのトド子。あなたたちのこと、ずっと待ってたんだよ?新たなる翼御一行様」
スカートをつまみ、上品にお辞儀するトド子。
「じゃあ君が、神の遣わし導き子?」
「うん!ねえ、あなたたちはどうしてゴールドドラゴンに会いたいの?」
「俺の母さんの病を治してもらう」
「もう争いが起こらない世界にしたい!」
「僕も同じだ。兄さんの願いでもある」
「黒魔術を使わなくてもいい世界になるように」
「俺たちレッドアイ族の目が、開いても熱線が放たれないように」
「レッドアイ族の目を狙う人が現れないように」
「私もみんなと同じよ」
「それともう1つ」
おそ松に合わせて全員が声をあげる。
「「神に願い事をしなくてもいい世界になるように!」」
トド子はキョトンとした。
「願い事をしなくてもいい世界に?」
「ゴールドドラゴンは、ストーグロックから動けないんだろ?それはあまりに辛すぎる。だからさ、願い事をしなくてもいい世界になれば、ストーグロックに縛られなくても済むじゃん」
するとトド子の目から涙がボロボロと落ちた。
「そんな願い事をするなんて、今までなかった…。みんな自分たちの都合ばかりで…。前に来た男もそうだった。目が狙われるから、目を開くと相手を消せるようにって」
「やっぱりそうだったのか。タイタンが言ってた目の綺麗な男って、レッドアイ族になる前の、ジュエルアイ族だったんだな」
「……目が開けると狙われる、目から熱線が放たれても狙われる…。もうそんなのはごめんだ!!」
トド子はうなづく。