第18章 松蔵の故郷
「心優しき残虐なる者よ、食べ物はその全てが命あるものじゃ。その命をもらうのじゃから、感謝するのはいいことじゃぞ?」
「べ、別に感謝しないわけじゃないし!てかその呼び方、やめろ」
ロック鳥の若者が一松に食って掛かった。
「おい、長老に向かってその口の聞き方はなんだ?!」
「ふぉふぉふぉ。よい、よい。わしの息子もこんな感じじゃった。息子と話しているようで嬉しいわい」
「その息子さんはどうしたんですか?」
チョロ松が聞くと長老は、少し淋しそうな顔をした。
「もう会えんじゃろう。わしも長く生き過ぎた。言い伝えの大いなる翼、それが息子じゃ」
おそ松が長老のそばに行く。
「もしかして、俺のお婆ちゃん?」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃった、そうじゃった。初孫が来てくれたんじゃったな」
そう言って頭を撫でる。おそ松も長老に甘えた。
「また会えるよ」
一松の言葉に首を振る長老。
「いやいや、あまりに長く生き過ぎたのでな。疲れたわい」
一松は長老の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるな!まだいけるだろ?!俺たちがおそ松の父親に、ここに来るように伝えるから、来るまで待ってろよ!」
長老は嬉しそうに微笑んで、一松の頭を撫でた。その目に涙が光るのを、一松は見逃さなかった。
「心優しき残虐なる者……一松よ。ほんにお前さんは心優しいのぅ。じゃがな、わしは自分より若い者が先に死ぬのを見るのは、もう嫌なんじゃよ」
「……っ!黙れ!まだ俺たちがゴールドドラゴンに会って願いを叶えてもらってねぇだろうが!!俺が、あんたが息子に会えるように頼んでやるから、それまでちゃんと生きてろよ!!」
長老は涙を流し、泣きながら訴える一松を抱き締めた。
「俺もあんたの孫になってやるから、もっと長生きしろ……!」
「おお……!嬉しいのぅ」
「お婆ちゃん!!」
「お婆ちゃん!!」
その場にいた全員が、長老を囲んだ。
「新たなる翼がもたらす風は、こんなにも優しさに溢れているのか…。長生きはするものじゃな…。今まで生きてきて、こんなに嬉しいことはなかった」
その日、おそ松たちは長老の肩を揉んだり今までの話をしたりと、本当の祖母のように触れ合った。
「俺たちの子供ができたら、真っ先に見せに来るぜ」
「俺も、俺も!」
○○とトト子は真っ赤になって照れながらうなづく。