第18章 松蔵の故郷
海を渡ったおそ松たちは、広野を歩いていた。ふとカラ松が足を止める。
「何か音がしないか?」
「音?………んや、なんも?」
全員聞き耳を立てて見たが、何も聞こえない。
「どんな音が聞こえる?」
「ゴーーーッていう音だ」
「風の音かしら」
「みんな、ちょっとだけ離れてて。ロック鳥になったら、集まって。やな予感がする」
おそ松はロック鳥になった。集まる仲間たち。その仲間たちを囲むように羽を丸く広げてドーム状にする。その時だった。ゴーーーッという音が聞こえたかと思うと、ものすごい突風が吹き荒れた。巻き上げられた石がバシバシと音を立てておそ松に当たる。
「おそ松くん!大丈夫?!」
「平気、平気。この風が収まるまでの辛抱だから。ね」
だが風は、なかなか止む気配がない。そのうちバシバシという音が大きくなってきた。
「おそ松、大丈夫か?音が尋常じゃなくなってきたぞ」
「だ、大丈夫だ……っ!!俺がここまで来れたのは他でもない、お前らのおかげだ。いって!!だからさ、たまには守らせてくれよ」
「おそ松くん。私がサポートするわ」
トト子が回復魔法を唱える。
「ありがてぇ!さすが俺の嫁さん!」
「ふふっ。すごいでしょー?気が利くでしょー?ほめて、ほめて!」
「おそ松!お前、勘違いしてるぞ!俺たちはいつもお前に守られてる」
「今回ばかりはクソ松に同意する。待ってろ、風の精霊シルフの力を借りるから」
一松が手を天にかざし、シルフに力を貸してくれるよう要請する。
「おおお!風の壁が出来た!」
おそ松が元の姿に戻ると、確かに風の壁が出来ていた。
「すごいな、一松!」
「なあ、みんな。俺みんなのこと、ちゃんと守れてる?」
「ああ、守ってもらってるさ!」
カラ松の言葉にみんながうなづく。おそ松は鼻の下を指でこすった。
「へへっ。なんか、くすぐったいや」
「おそ松くん、大丈夫?」
「ん?おう、トト子のおかげでな」
シルフの力で出来た風の壁を盾にして進むおそ松たち。どのくらい吹き荒れただろう、ようやく風が収まった。
「ねえ、兄さんたち!空を見て!」
十四松に言われて空を見上げると、ロック鳥が飛んでいた。
「もしかしたらあの風は、これか」
「ってことは、父さんの故郷が近いってことか」
「行ってみようよ」
「ああ!」