第1章 幻想世界の言い伝え
「何て幸せなことなの?!ずっと憧れていたロック鳥と、結婚できるなんて!!こんな幸せは、ないわ!」
長老も松蔵も、目を丸くした。
「恐ろしくはないのか?」
「恐ろしいだなんて、とんでもない!この世界にはずっと来たかったし、ロック鳥は大好きだし!松蔵さん、よろしくお願いします!」
「えっ?!……あ、ああ…」
勢いに飲まれ、うなずいてしまう松蔵。
「これはまた…、変わった娘じゃて。ちょうど松蔵も、そろそろ嫁をと思っていたからな。ちょうど良いではないか」
「長老!自分事じゃないからって!!」
困り果てた松蔵は、もう一度松代を見た。嬉しそうに微笑んで、頬を赤らめているその姿に、胸がキュンとなった。かわいい、そう思った。
「じゃが確かに、この村で暮らすのは、無理やも知れんな」
「…分かりました。俺もこの松代を拾った責任があります。どこか探して、新しい村を作ります」
「ファッファッファ。もはや言い伝えは、現実になるのぅ。松蔵よ、達者でな」
「長老もどうか、息災で。行くぞ、松代」
「はいっ!!」
松蔵は再び松代を背に乗せ、空へと飛び立った。
松蔵を見送りながら、長老はポツリと言った。
「言い伝えは現実となったが、輝ける峰…あの山に登るほどのことが、起こるということじゃ。心するんじゃぞ」
松蔵は、何処なら松代が安心して暮らせるか考えながら、翼を羽ばたかせていた。時折地に降りて洞窟などで休みつつ、狩りをして腹を満たしつつ。
やがてどの種族も住んでいない場所を見つけ、そこに降り立ち、早速材木を集めて家を建て、そこで生活し始めた。
最初は新地に慣れなかった松蔵も次第に慣れていき、松代もまた、この世界の生活に慣れていったようだった。
元々この世界に来ることを望んでいた松代のこと、辛いなど言わない。いつしか松蔵は、そんな健気な松代を愛するようになった。
二人だけだったこの場所も、異種族同士で愛し合って駆け落ちした者たちが集まって、気づけば一つの集落になっていた。
松蔵はこの集落をテリ・ドルークと名付けた。初めは松代が人間だと知って驚き、敬遠していた者たちも、松代の健気さに心を許すようになった。そんなある日。
「松代」
「はい」
「結婚しよう」
「え?結婚なんて…」
「嫌ならいいn」
「もう、してると思ってたけど?」
「え?!」