第1章 幻想世界の言い伝え
松蔵は巨大な羽を羽ばたかせ、大空へと舞い上がる。
「すごいわ!夢みたい!私、ロック鳥に乗ってる!」
ロック鳥の背中は、あと10人くらいは余裕で乗れそうだった。そんな背中を独り占めしている。その事実が松代の心を、さらに高揚させた。
松代は辺りを見回した。幻想世界はどこまでも広く、建造物はあったとしても小さな家くらいのものでビルなどはなく、ただ広大な自然の風景が広がっていた。その中でも一際目につくにのが、とてつもなく高い山だった。その頂上がどこなのか、全くわからない。すっきり晴れているにも関わらず、頂上が見えなかった。
やがてロック鳥が地に着き、松代は背中から降りた。松蔵も姿を変え、松代に手を伸ばす。
「来い」
松蔵についていくと、通りかかった人が…恐らくロック鳥族だろう。松代を注視し、後についてきた。
「長老!」
松蔵が声をかけると、家から老人が出てきた。
「松蔵か。む、その娘は?」
「人間がこの世界に、迷い混んで来ました」
とたんに周りがざわつく。
「なんと…!あの言い伝えは、本当かも知れんな」
「言い伝え?」
「うむ。その言い伝えは、こうじゃ」
彼の世より来たる者ある時 大いなる翼 空に舞いて新たなる風を起こさん
新たなる翼 世に出で 七つの光と共に 輝ける峰に向かわん
一つ 武器持たぬ狙撃者
一つ 森を統べる王族
一つ 心優しき残虐なる者
一つ 閉目の可視者
一つ 悲しき鬼女
一つ 森の守護者
一つ 神が遣わし導き子
新たなる翼 七つの光と共に 世に平和をもたらさん
新たなる輝き 降りる時 峰は地に落つ
「彼の世とはまさに、人間世界。この娘が大いなる翼、つまりはわしらロック鳥族と共になって新たな命が生まれれば、この世界はさらに平和になるということじゃ」
「そんな言い伝えがあったんですか」
「うむ。まさか本当に、人間世界から来る者がいるとは、思わんかったからな」
「ですが長老。この世界で人間が暮らせるでしょうか?」
「それは一緒にいる者次第じゃな」
松蔵は松代を見た。その体は震えていた。
「私、ロック鳥と結婚するんですか?!」
「そういうことじゃな」
すると松代は下を向いて、さらに体を震わせる。
「恐ろしいかも知れんが、これもうんm」
「やったぁああ!!」