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[おそ松さん]ストーグロックへ

第9章 自我なきゴブリン族


金属音がしたかと思うと、数人のゴブリンたちが現れた。

「侵入者は始末する」

まるで機械がしゃべっているかのような口調。

「王様のご命令」

「仰せのままに」

武器を構え、突進して来る。その動きすら機械的で、ただ命令を実行しているだけだ。

「十四松、少し脅かしてやれ」

「あい」

十四松が矢をつがえ、ゴブリン兵の兜を外させた。だが、微動だにしない。

「逆らう者には、死を」

「侵入者には、死を」

「こいつら、自我がない」

一松が言った。

「目を見ろ。焦点が合ってない」

「すまんが俺には状況が分からん。教えてくれ」

「つまりこのゴブリンたちは、自分の意思で動いてる訳じゃないってことだね」

「操られているのか」

「そう。そして操っているのは恐らく、こいつらの言う王様」

「そいつを倒せばこいつらは、元に戻るのか?」

「それは分からないよ」

そんなやり取りをしている間にも、ゴブリン兵は襲いかかってくる。

「こいつらを何とかしないと、俺たちがやられちまう!」

「王様は多分、あの城だろうね」

そのうち一人のゴブリン兵が、ラッパを吹いた。すると至るところからゴブリンたちが出てきた。

「王様の命令」

「侵入者には、死を」

「王に逆らう者には、死を」

その数はどんどん増えていく。

「くっそぉ!みんな、俺に乗れ!」

おそ松がロック鳥になった。仲間たちを乗せて羽ばたく。

「一松!俺の羽ばたきとお前の黒魔法を、重ねるぞ!」

「ちょ!一松に黒魔法使わせたらどうなるか、知らない訳じゃないでしょ?!」

「分かってるよ!ちょっとでいいんだ!そのちょっとを俺の羽ばたきで大きくすんだ!」

「…やってみる!暗黒世界に住みし赤き魔神の配下よ、来よ!」

一松の手が炎に包まれ、その手を振り下ろせばおそ松の羽ばたきが、炎の威力を増して己の竜巻に合わせ込んだ。

「いっけぇ、ファイアーストーーーム!!」

炎の竜巻がゴブリン兵たちを飲み込んでいく。だがゴブリンたちは、それでも悲鳴すら上げず、その口から呪文のように、同じ言葉を発していた。

「王に逆らう者に、死を」

「王様のご命令通り」

「………心を無くしてしまったか」

カラ松は辛そうな顔で呟いた。

「王を倒さねば、な」

「……っつぅ…!」

一松が手を押さえて呻く。

「大丈夫か?!」



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