第7章 閉目の可視者
それからしばらくして、なにやら争う声が聞こえたおそ松たちは、そっちに行ってみた。
「おらおら!その目、開いて見ろよ!」
「だ、駄目だ…。この目を開けば、お前たちが」
「ぁあ?!俺たちがどうにかなるってのかよ?!」
一人の男を数人がかりで殴り、蹴っている。その傍らには、その男の恋人だろうか、女性がいた。
「お兄ちゃん、もういいよ!やっちゃえ!!」
妹だったようだ。
「女は、黙ってろ!」
暴力をふるっていた男の一人が、彼女につかみかかろうとした時。
「あんこら、あんこら、あんあんあんくぉるぁ!!」
肩で風を切りながら、おそ松が割って入った。
「何だ、てめぇ!!」
「一人に数人がかりで、恥ずかしくないのか、こら!女に暴力ふるおうとか、最低だと思わないのか、こら!一人じゃ何も出来ないのか、こら!そんなんで勝ったって、自慢にもならねぇぞ、こら!」
「あんあんうるせぇんだよ!!やっちまえ!!」
「けっ!徒党を組むことしか、頭にねぇのかよ?!」
「待て!」
やられていた男が立ち上がった。
「野郎、まだ立てるのか?!」
「ふん。残念ながら俺は、打たれ強いんでな。妹に手を出すなら、俺はお前たちを倒すぜ」
「危ないから、こっちに」
その隙にチョロ松が、彼女をその場から離れさせた。
「いきがってんじゃねぇぞ!」
おそ松と共に男たちを殴るその男…いや、妹も同じだが、目を閉じている。その状態で戦っているではないか。しかも、ちゃんと見えているようだ。男たちの攻撃を華麗に交わし、強烈なパンチを浴びせている。
「お前、強いな!」
「ふっ、お前こそ」
やがて男たちは、ボロボロになって逃げて行った。
「どこの誰かは知らんが、礼を言うぜ」
「俺、おそ松!」
「あは!十四松だよ!お兄さん、強いね!」
「チョロ松だ。あんなに強いなら、さっさとやっつければよかったのに」
「一松。ほんと、それ」
「カラ松だ。俺は、暴力は好きじゃない。それに殴った方も、その手が痛いさ」
「うわ!痛いね、お前」
「えっ?お前を殴ってはいないぞ?」
「あー。そういう意味じゃないんだよ」
「とにかく、回復魔法かけるよ?」
「その背丈と魔法…。エルフ族か」
「見えてるの?すっげーね!!」
「お前は……小人族で弓矢…。コボルトじゃないな。何だ?」