第6章 おそ松の苦悩
「俺さ、半分人間の血が流れてんだよ。もしお前の魔法が効かなかったらって、考えちまうんだ。他の種族ならまだしも、何で俺は人間なんだよ?!何で母さんは、この世界に来ちゃったんだよ?!この先、病気とかして、チョロ松の回復魔法が効かなかったら、どうすりゃいいんだよ?!」
「おそ松!!」
おそ松を抱きしめたのは、一松だった。
「そういうのも全部、ゴールドドラゴンにお願いしよう」
「……うん…。わりぃ、カッコ悪いことしたな」
「いや、お前の本音が聞けて、よかった」
「はっ。何だよ、それ」
「ふっ。元気、出た?」
おそ松は一松の肩をがっしり掴んだ。
「元気百万倍!!…ありがとな、一松」
「おそ松、お前は一人じゃない。俺たちがいるんだ。大丈夫さ」
「……母さんも、大丈夫だよな?一人じゃないもんな?」
「ああ、きっと大丈夫だ」
「そうだよな!いやー、さすが心優しき残虐なる者は言うことが違うねー!」
「それ、あんまり言うな。こ○すぞ!」
「あはは、照れちゃって。かーわいいねぇ」
「てめぇ!!」
一松が持っていた剣を振り回す。
「おわ!!ちょ、やめ…!わーった、わーった!!悪かったって!」
「はいはい、仲違いしない!おそ松も、一松をからかうのはやめろ」
「はーい、さーせーん」
「一松も、いちいちカッカしないの」
「はーい、さーせーん」
そうは言うものの、やはり心のどこかでスッキリしないおそ松。母親の体調も気掛かりだが、自分の身も気掛かりだった。ゴールドドラゴンに会う前に何かあったらどうすればいいのか、皆目検討もつかない。だがそんな気弱なことを、仲間に言えるはずもない。己のプライドがそれを許さない。
仲間がいる分救われているものの、やはり人間とのハーフは自分しかいない。
「ええい!!しっかりしろ、おそ松!」
おそ松は自分の頬を叩いた。当然痛い。だが、少しはスッキリしたように思えた。
「おそ松兄さん」
「ん?」
「ぃよいしょー!」
おそ松を頭の上に掲げる十四松。
「何すんだよ、降ろせ!」
「僕にとって兄さんは、カリスマレジェンドっす!だから、悲しまないで。自分に負けないで欲しいっす!」
「十四松……。ありがとな」
「わーっしょい、わーっしょい!!」
胴上げされながら、仲間がいることのありがたみを痛感するおそ松だった。