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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第8章 夏の華 ―ハイジside―



少しは、ドキドキしてくれた?

馬鹿だよな、俺。
自分から試すようなことを口にしておいてもう後悔している。

やっぱり、好きだ。
募っていく愛おしさを誤魔化しきれない。



「まだ水、滴ってるよ」

「え、ほんと?」

「ほんと。後ろの方。拭いてあげるから貸して?」

「うん…」

受け取ったタオルに髪の水分をトントンと含ませていく。
後ろ髪を持ち上げると、間近に白いうなじが現れた。

決意が揺らぎそうになる。

このまま抱きしめて、露になった首筋に唇で触れたら。
君はどんな声を漏らすだろうか。

衝動に身を任せたとして、3ヵ月前ならまだ許されたかもしれない。
けれど今は違う。


舞ちゃんは、ユキのものだ。


夢を追うことしかもう残されていない。
戒めるように、ギュッと瞼を閉じた。
舞ちゃんを悲しませることも、ユキを裏切ることも、俺にはできない。してはいけない。



「よし!こんなもんかな!急いで帰ろう」

無理矢理明るい声色を上げて、自分で自分の感情を断ち切った。

「ありがとう」

「それにしても雨凄いな。明日は晴れるといいけど」

慎重に、安全運転で。
舞ちゃんをユキの元へ。




「ただいまー」

「おかえり。大丈夫だったか…って、ゲッ!びしょ濡れじゃねーか!」

「濡れちゃった」

「濡れちゃった、じゃねーよ!風邪引くだろ!風呂溜めといたから早く入ってこい!」

「ありがと、ユキくん。…あ、洗剤!車に忘れてきた!」

「洗剤ならここにあるぞ」

俺は手にしていたコンビニの袋を掲げる。

「だとよ。ほら、風呂」

「うん、着替え取ってくる。ハイジくん、ありがとう。迎えに来てくれて」

「どういたしまして」

二人が醸し出す雰囲気は、想いを通わせた男女そのもの。
ユキは舞ちゃんの手を取って風呂場へ向かい、彼女を脱衣所に押し込めた。


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