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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第19章 淡雪、舞う



――数年後――



「舞ー?どうした?約束の時間に遅れるぞ?」

「ちょっと待って。今髪の毛纏めてるから。あー…緊張するなぁ」

「自分の実家行くのに何で緊張するんだよ。俺なんてな、舞の五倍は緊張してるからな!?」

「大丈夫だよ。夏合宿の時、お父さん言ってたでしょ? "お前になら舞をやってもいい!" って」

「あん時とはまた違うだろ?正式に挨拶しに行くんだから」

洗面台を陣取っていた私の脇に立つと、ユキくんはネクタイに指を掛け、位置を調整し始める。

「あ、そうだ!」

「何?」

「今日は、ユキくんに着けて欲しいな。コレ」

ジュエリーケースから取り出した白金のエンゲージリングを、ユキくんに差し出す。

「いいよ」

微かに笑うと、ユキくんは私の左手を持ち上げ、それを薬指にするりと通した。
私のために、私のことを想ってユキくんが贈ってくれたもの。
エタニティのダイヤが煌めいて、何度眺めても感嘆のため息が漏れる。

「似合ってる」

「ありがとう、ユキくん」

「よしっ、行くか。今日は寒いからな。上着着ろよ?」

「うん」

二人で戸締まりの確認をして、慌ただしく靴を履く。
出かける時の挨拶も一緒に。

「「行ってきまーす」」

ガチャっという施錠の音を確認して、私たちは駅へと向かって歩き始めた。





「そろそろ結婚を考えていて…、結婚させてください…、あー…どう言おうかなぁ」

「どっちでもいいと思うよ」

「気楽だなぁ、舞は」

「だってユキくん、ここぞという時にはビシッと決めるじゃない?」

「プレッシャーかけんな!」


あの頃より、大人の男の人になったね。
髪型は少しだけ変わったし、ピアスもしなくなった。
スーツの着こなしも、ネクタイを結ぶ仕草も様になって。
どこかの誰かのために、一生懸命仕事をしているユキくん。


私を包んでくれる愛情だけは、変わらないまま。


「寒いか?」


「こうしてたら、平気」


ぬくもりを求めて、手を繋ぐ。



空からは、あの日と同じように、淡雪が降りてきた。






【 end 】


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