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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第8章 夏の華 ―ハイジside―



「これ使って。ごめん、もう少し早く来るべきだったな」

持ってきたタオルを渡しながら謝る。
ただでさえ東京から来てもらっているのに、これで風邪でも引かせたら大変だ。

「全然だよ。来てくれてありがとう。みんなくらい早く走れたらこんなに濡れずに済んだのにね」

髪を拭きながら何でもないことのように笑ってはいるが、唇の色も悪いし小刻みに震えている。

「洗濯洗剤を買ってこればいいんだっけ?」

「うん、お願いできる?」

「ああ。舞ちゃんは待ってて」

再びコンビニに入り、まずは目当てのものを手に取る。
あとは温かい飲み物を…と思うが、今は8月。
飲料コーナーにホットのものはないため、レジの横に設置されているコーヒーメーカーでカフェラテを選ぶ。



「おまたせ。はい、これ」

頼まれた洗剤は後部座席に置き、熱いカップのそれを舞ちゃんに手渡した。
気休めかもしれないが、別荘へ帰るまでの間に少しでも冷えた体が温まるように。

「わ、嬉しい!ありがとう」

「うん。…え、あ、ちょっと待って!」

「何?」

さっきはびしょ濡れの姿を目の当たりにして慌てていたから気づかなかった。
水を含んだ白いTシャツは、その下のものを浮かび上がらせていて。


まずい、下着が透けてる。

……水色か。

……ではなくて!
目のやり場に困るぞ。
さて。どうする?


「ハイジくん?」

「ああ…」

このまま帰ったらみんなにもこの姿を見られるわけだ。
それは可哀相だし避けなければ。
迷うことなく着ていたジャージを脱いで、舞ちゃんに差し出した。

「これ、着て」

「え?大丈夫だよ!ジャージ濡れちゃうし」

「いや、少しでも温かくしないと。ユキも心配してたし」

「…うん。ありがと」

ユキの名を出すと、はにかんだ笑みを浮かべつつ素直にジャージを受け取って袖を通した。


やっぱり、少し悔しいもんだな。





「ユキとは順調?」

「え?」

「付き合ってるだろ?」

「な…んでわかったの?」

「見てればね」

舞ちゃんの些細な変化になら、すぐに気づく。


ずっと好きだったから。



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