第4章 焦燥
「アオタケーっ!!」
「行けーっ!ガンバレーっ!!」
「みんなぁーっ!!がんばってー!!」
先輩とキングくんにつられて私も思わず声を上げる。
「ラァーストォーッ!!」
ハイジくんも腕を振り回して応援し始めた。
「ジョージ!ジョータ!ユキさん!神童さん!」
カケルくんも。
「がんばれー」
王子くんも。
こんな感覚は初めて。
きっとこれがチームってものなんだと思う。
走っていなくても、少しでも声が届くのならありったけのエールを―――。
結果は惜しくも公認記録達成ならず。
けれど…
「全員自己ベスト更新だ!」
隣に並ぶハイジくんが歓喜に打ち震えている。
「すごい!やっぱりこのチームって本当にすごいよ…!」
「舞ちゃん!」
テンションが上がったハイジくんが、私の体をギュッと抱き締めた。
「……」
熱い体温を残して、その体はすぐに離れていく。
「よくやったぞーっ!みんなぁー!!」
興奮冷めやらぬまま、ゴール地点に送られる激励。
私という人間は何て不謹慎なんだろう。
ハイジくんはこの喜びをハグで表現しただけであって…。
それなのに、今一瞬、ドキッとしてしまった。
この日の大会に出場した5人は、公認記録こそクリアしなかったものの、大幅に自己記録を塗り替えた。
「乾杯ー!」
アオタケの一室。
テーブルの上には所狭しとハイジくんの作ったごちそうが並ぶ。
缶ビールに酎ハイ。未成年用の緑茶や烏龍茶も。
今夜は打ち上げだということで、誘われるままアオタケにお邪魔している。
ハイジくんも疲れているだろうし何か手伝いたかったのだけれど、カケルくんと台所で話し込んでいたのでやむなく遠慮してきた。
「本当にみんなすごかった!お疲れ様。はい、ユキくん」
割り箸と、お皿に取り分けた唐揚げを隣に置く。
「サンキュ。あーあ、まだ走らなきゃいけないと思うとゾッとするわ」
「ユキくん口ではそんなこと言ってるけど。ねえ?ジョータくん」
「ほんとほんと!こんだけ走っといてさ!なあ、ジョージ」
「何だかんだ真面目だし。長距離関係の本読んでるの、俺知ってるもんねー!」
「舞!双子と結託すんな!」
お酒が入っているのもあって、室内は和やかな空気に包まれる。