第18章 白銀 ※ ―ユキside―
夕飯までにはまだ時間があるが、この雪だ。
もう一度外に出て散策しよう、とはならない。
本格的に降り出す前に観光できてよかった。
「明日、帰れるかな?電車止まるかも…」
翌日の交通事情が気がかりなようで、舞は窓辺に立ち外を眺める。
「そしたら、もっと一緒にいられるじゃん」
その背後に立ち、舞の動きを封じるように後ろから抱きしめた。
「うん…」
舞は小さく頷いて、俺の腕に寄りかかってくる。
こんな風に素直に甘えてきてくれるところが、堪らなく可愛い。
夕飯前にしたいことが決まった。
「温泉でも入るか?」
「そうだね」
「一緒に、だぞ」
舞の肩越しに顔を覗き込むと、少し恥ずかしそうに俺を見つめ返し、また頷いた。
次に舞と旅行できるのは、いつになるかわからない。
だからできる限り一緒にいられるように、露天風呂付きの部屋を選んだ。
今日の天気では夕焼けは無理だが、湯けむりの向こうには白銀の山が見られるだろう。
先月訪れたばかりということもあり、箱根の寒さは承知の上だ。
しかしこの辺りの積雪は、深夜にかけてまた深くなるかもしれない。
そんな中着るものを脱ぎ捨てて一瞬でも身ひとつになるのだから、互いに悲鳴のような声が上がる。
寒々とした外気に体を震わせながら、暖を求めて慌てて湯に浸かった。
「「はあぁぁ〜…」」
何という幸福感だ。勝手に声が漏れる。
熱い湯によって肌がジリジリと温まってゆく。
その熱が芯に達してしまう前に、舞の体を捕まえた。
両脚の間に舞を座らせて、さっきと同じように背後から包み込む。
俺の腕の中に収まった状態の舞は、ご丁寧に体の前面をタオルで隠したままだ。
「タオル、取れば?」
「灯りがついてるから恥ずかしいよ」
「舞の裸ならもう知ってるし。それに、初めてシた時はそっちから風呂に誘ったじゃねーか。意外と大胆な子だなーって思ったね、あん時は」
「違う!あれは泡風呂にすれば見えないと思ったからで…」
「わーかってるって」
邪魔な布切れをつまみ上げ、湯の外に出す。
舞は恥ずかしそうにしながらも抵抗はしない。
白いうなじに軽くキスをすると、小さく身体を揺らした。