第17章 大手町にて
王子。
運動経験がない中で、チーム内で一番と言ってもいいほどの根性を見せてくれた。
最後の記録会の日、君が公認記録を出した時、思わず涙してしまったことは秘密だ。
ムサ。
いつでも真摯に走りと向き合っていたのが、君だ。
アオタケの面々の調和が上手いこと取れていたのは、他人を思いやる心に富んだ、その存在があったからだろう。
ジョータ。
"女の子にモテたい" が始まりだったな。
でも、気づいていたか?
ひとたびトレーニングとなれば目を見張る集中力を発揮し、女の話題など微塵も出さなかったことを。
ジョージ。
ジョータとひとつ違ったのは、カケルを尊敬する一方で始終ライバル視もしていたということだ。
陸上にどんどんのめり込んでいくお前を俺がどんなに喜ばしい気持ちで見ていたか、想像もしていないだろうな。
神童。
本当によく走ってくれた。ありがとう。
もう、それしか言えない。
感謝している。
神童が繋いでくれたから、今の勝負がある。
ユキ。
熱を露にする奴ではないけれど、やるからにはとことんやる男だ。
走るだけでなく骨や筋肉の構造まで勉強し、影からチームを支えてくれた。
あとは……舞ちゃんといつまでも仲睦まじくいてくれたら、俺はそれで満足だ。
ニコチャン先輩。
弱音を吐かず、どんな精神状態にあっても波風を立てず、アオタケの最年長としてみんなをよく見ていてくれた。
先輩は、強いです。
キング。
就活に有利だとそそのかして陸上に引き入れたこと、許してくれてありがとう。
お人好しのお前に甘えてしまったことは否定しない。
就活、手伝うよ。弁当作りでもアイロンがけでも任せてくれ。
カケル。
遂に辿り着くことができなかった、理想の姿―――それが君だ。
カケルはカケルのままでいい。
君はこれから、きっともっと強くなれる。
最高のチームだ。
俺がようやく手にした、希望のかたちだ。
絶望したこともある。
自分に、世の中のすべてに裏切られたと思った時もある。
でも、違った。
走るということは、前よりももっと美しいかたちで俺の前に帰ってきてくれたんだ。