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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第15章 天下の険



2区に入った途端、ランナーたちのペースが上がる。
絶えず耳から与えられる情報がそれを教えてくれた。
花の2区と言われるだけあり、各大学のエース級の選手たちが序盤から快走を見せているようだ。


ムサくんが目指す先、戸塚中継所には、3区の走者であるジョータくんと、付き添いであるキングくんが待機中。
そしてたった今ニコチャン先輩から、4区走者のジョージくんと共に平塚中継所に到着したと連絡が入った。
神童くんのことはユキくんに任せているので、これから私たち3人は一気にゴール地点の箱根、芦ノ湖へ向かう。

実は私だけ鶴見に残って王子くんに付き添おうかと提案したのだけれど、本人に拒否されてしまったのだ。
神童くんがゴールするのを待っていて欲しい、と。
待っていてくれる人がいると思うだけで力になるから、と。
1区を走りきった王子くんだから言えた台詞だ。





「ムサにもう一度抑えるよう伝えてください!速過ぎる!」

横浜駅のホームで電車を待っている最中、監督と連絡をとっていたハイジくんの声色が変わった。
5kmの地点で抑えろと伝えたはずのペースが、変わっていないのだそうだ。
再度指示してもらうよう依頼をし、ハイジくんは電話を切った。


「1km平均2分48秒…。絶対最後までもちません」


「飲まれたか…」


カケルくんとハイジくんは、タイムはもちろんのこと、個々の特性や身体的特徴などレースに関わる要素を把握している。
その二人が焦りの色を見せているものだから、私にも不安が過る。

まだまだ先は長く、難所も続く2区。
10kmにも到達していない時点でのこの走りは、後半失速し大ブレーキを招く恐れもあるらしい。

トップ争いが激しくムサくんの姿は映し出されないため、後方を追う監督の情報だけが頼り。
寛政大学の順位は、現在18位。


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