第9章 Don’t Die Away
「……すみません、隊長。今言ったことは忘れてください」
どれだけの葛藤をやりすごしたのか、顔をあげた沙羅はカラリとした笑顔を浮かべた。
「久しぶりに熱なんて出たから弱気になってたみたいです。副隊長がこんな調子じゃ示しがつきませんよね。しっかりしないと!」
ぱん、と両手で頬を張って笑ってみせる沙羅に合わせて、浮竹も表情を和らげる。
「さて、休んだ分早く取り返さなくちゃ。今日はバリバリ働きますよ!」
「こら、調子に乗るな。一応まだ病人なんだからな」
「大丈夫です。もうすっかり元通りですから」
ぐるぐると肩を回してみせると浮竹は呆れ顔で嘆息した。
「さっき言ったことをもう忘れたのか? もう少し自分の身体を労れ。とにかく、おまえは今週いっぱいは休暇だ。隊舎に出てきたらただじゃおかないぞ」
脅し文句のように告げられ沙羅は渋々頷いた。
本当に不調を訴える部分はどこにもないのだが、これ以上文句をつけると倍になって小言が返ってきそうだ。それもまた浮竹が自分の身を案じるからこそ、なのだが。
「じゃあまた来るからな。くれぐれも安静にするんだぞ」
やたらと低い声音で告げられた最後の台詞にはーいと苦笑しながら、沙羅は浮竹の背中を見送った。
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