刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
あの者の言葉と視線は、まるで雨に濡れた服のように体にベッタリと纏わりつくようで、不快極まりない。
己をあのような媚びた目で見るようになったのはいつからだったか…
それも審神者との関係性を知っている癖に、それを壊そうとするようなあの物言い… 明らかに以前とは様子も雰囲気も違う女に、大倶利伽羅は違和感を覚えていた。
腹が立つ。
それにあの者の相手は疲れる。
あいつに会いたい…
ここのところ二人の時間が取れるどころか満足に話しさえ出来ていない状態だ。あと数日の我慢だと自身に言い聞かせてきたが、あの者のあの態度。ここを出ていく気なんて更々ないんじゃないのか…
だったらこれ以上…我慢する気はない。
それにもう我慢の限界だ。そう思った大倶利伽羅の足は自然と審神者を探しにその場を後にしていた。
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…ドンッ!
執務室に向かって廊下を曲がったところで誰かと思いっきりぶつかってしまった。私としたことが、シーちゃんの事を考え込んでいて全く前を見ていなかった。ここは本丸、ぶつかる相手は刀剣だと思うけど、本当に神様は気配がしなくて困る。
でもいつもなら先に気配に気付いてくれる刀剣が、華麗に避けてくれるのに……珍しいこともあるもんだ。