刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第48章 忍び寄る魔の手
「ごめんなさっ………ッ!大倶利伽羅さんっ」
ぶつかった黒い人物に慌てて謝ると、そこには私を見つめている大倶利伽羅さんがいた。どうやらわかっていてわざと避けなかったようだ。
「どこにいた…探したぞ」
「え、どこって…何か約束でもしてたっけ?」
「うるさい」
少し苛立っているような感じの大倶利伽羅さんは、ずいっと距離を詰めてきて、同時に私の腕を掴んで自身の方に引き寄せる。その拍子に持っていた書類がバサバサと音を立てて床に散らばった。
「あっ」
床に落ちた書類を拾おうとするも、大倶利伽羅さんがそれを許さず、あっという間に彼の腕の中に収まった私は驚きを隠せずにいる。
「え、な、何?…ど、…どうしたの?」
「……」
大倶利伽羅さんは何も言わず、私を抱きしめている腕にぐっと力を入れる。
「っ……ね、何かあった?」
「…別に」
そう言いながらも私から離れようとしない大倶利伽羅さん。更に彼は私の首筋に顔を埋めてきた。誰が来るかも分からないこんな場所で、彼が甘えるような仕草をするなんて珍しい。
何かはわからないけど、余程のことがあったのだろう。