第1章 ◆ありったけの愛を、君に。 碓氷真澄
「え、真澄くん風邪!?」
「ああ、昨日談話室で何も掛けずに寝てしまったみたいでな…。
今朝の早い時間に、左京さんが病院に連れて行って薬も貰ってるから、あとは寝てれば治るだろうっていう事だったんだが…
……監督、看病頼めるか?」
「もちろん、任せて!」
「すまんな…、皆今日も出てしまうみたいで…。
俺も、できるだけ早く帰るようにはするから」
「大丈夫だよ。いってらっしゃい」
最後の臣くんを見送って、真澄くんの様子を見るために、部屋に向かう。
ドアを開けると、ベッドには、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す真澄くんが横たわっていた。
近くにあった桶には水が張ってある。
それでタオルを濡らして浮かぶ汗を拭った。
冷たくて気持ちいいのか、苦しそうに歪められていた表情が少しだけ和らいだ。
「……ごめんね…」
彼が風邪を引いたのは私のせいだろうというのは、何となく気付いた。
昨日の態度が原因だろう。
それと、綴くんに言った言葉も。
彼経由で真澄くんが聞いていてもおかしくはない。
けど、確証も何もない状態で彼に謝るのは違う。
そんな状態で謝るのは、余りにも誠意がない。
それでも謝りたいというのは、ただの自己満足だ。
自分が許されたいから、なんて身勝手な理由しか存在しない。
…そう思ってるのに、意識の無い彼に謝る私は、どれほど身勝手なのだろう。
「……ッ…かんとく……?」
「……、ごめん、起こしちゃった?」
「………ねぇ…かんとく…」
「ん…?」
「………かんとくは、…もう、誰も好きにならないの…?」
「………」
ああ、やはり綴くんに聞いたのだろう。
真澄くんは悲しくて、談話室で呆然として、そのまま寝てしまったんだ。
やっぱり、言うべきじゃなかったな。
今すぐ昨日に戻って私をぶん殴ってでも止めたい。
けど今はそんな事を言っている場合ではない。
「…、いいから、今は寝なさい。
寝て、風邪を治してからお話しよう。」
「………ん…」
髪を梳くように撫でてやると、すんなりと眠りに入っていった。
私もいい加減、覚悟を決めないといけない。