• テキストサイズ

【A3!】恋する劇団

第1章 ◆ありったけの愛を、君に。  碓氷真澄


「え、真澄くん風邪!?」


「ああ、昨日談話室で何も掛けずに寝てしまったみたいでな…。

今朝の早い時間に、左京さんが病院に連れて行って薬も貰ってるから、あとは寝てれば治るだろうっていう事だったんだが…
……監督、看病頼めるか?」


「もちろん、任せて!」


「すまんな…、皆今日も出てしまうみたいで…。
俺も、できるだけ早く帰るようにはするから」


「大丈夫だよ。いってらっしゃい」


最後の臣くんを見送って、真澄くんの様子を見るために、部屋に向かう。

ドアを開けると、ベッドには、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す真澄くんが横たわっていた。


近くにあった桶には水が張ってある。

それでタオルを濡らして浮かぶ汗を拭った。

冷たくて気持ちいいのか、苦しそうに歪められていた表情が少しだけ和らいだ。



「……ごめんね…」



彼が風邪を引いたのは私のせいだろうというのは、何となく気付いた。

昨日の態度が原因だろう。
それと、綴くんに言った言葉も。

彼経由で真澄くんが聞いていてもおかしくはない。


けど、確証も何もない状態で彼に謝るのは違う。

そんな状態で謝るのは、余りにも誠意がない。


それでも謝りたいというのは、ただの自己満足だ。
自分が許されたいから、なんて身勝手な理由しか存在しない。


…そう思ってるのに、意識の無い彼に謝る私は、どれほど身勝手なのだろう。



「……ッ…かんとく……?」


「……、ごめん、起こしちゃった?」


「………ねぇ…かんとく…」


「ん…?」


「………かんとくは、…もう、誰も好きにならないの…?」


「………」



ああ、やはり綴くんに聞いたのだろう。

真澄くんは悲しくて、談話室で呆然として、そのまま寝てしまったんだ。

やっぱり、言うべきじゃなかったな。


今すぐ昨日に戻って私をぶん殴ってでも止めたい。

けど今はそんな事を言っている場合ではない。



「…、いいから、今は寝なさい。
寝て、風邪を治してからお話しよう。」


「………ん…」



髪を梳くように撫でてやると、すんなりと眠りに入っていった。

私もいい加減、覚悟を決めないといけない。
/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp