第1章 ◆ありったけの愛を、君に。 碓氷真澄
「………」
「…おい、碓氷はどうしたんだ」
「あー……まあ、間接的に失恋したというか…」
放心状態の真澄が談話室のソファの隅に座っている。
その余りに異様な様子に、今まで放置していた左京さんもいい加減心配なってきたらしい。
俺の返事を聞いてまた怪訝そうな表情を浮かべていたが、他に答えようがない。
さっき、俺が監督に臣さん特製のおかゆを持っていった時の答えを伝えてから、真澄はずっとあの様子だ。
『もう好きな人作らないって決めてるから』
そう言った監督の顔は辛そうで、苦しそうだった。
だからこその決意の硬さが見えた。
あの人の過去に何があったんだろうと気になる。
いつもニコニコ笑って、俺達の演技が少しでもよくなるようにと努力してくれている彼女の事は、皆慕っている。
だから様子のおかしい彼女の事を心配しているし、さっき戻ってきた時もどうだったと詰め寄られた。
これだけ慕われているのに、何故彼女はあれほど頑ななのだろう。
何が彼女を、そうさせたのだろうか。