第1章 ◆ありったけの愛を、君に。 碓氷真澄
「ますみくん」
「ねぇ、どうしたら俺を好きになってくれる?」
「黙って、お願い」
「やだ。アンタに俺の気持ちを信じて欲しい」
「……おねがい、だから」
「……監督のこと、好きでいるの迷惑?」
「―ッ」
迷惑だと、言ってしまえばいい。
そうすればきっと彼は、優しいから、もう言わなくなるだろう。
けれどもそれは同時に、彼を傷つける行為だとわかっている。
「ねぇ、監督」
「……ごめん、部屋に戻るね。臣くん、そろそろ戻ると思うから、ご飯作ってもらって。」
彼の気持ちに答えず、逃げる私は卑怯者だ。
"あの人"と私は、何が違うのだろう。
自己嫌悪を胸に抱えて、私は自分の部屋に逃げ込んだ。
けれど、あのままあそこにいたくなかった。
彼の気持ちをあれ以上聞きたくなかった。
そんな私のエゴで傷付けてしまった彼に、罪悪感を抱きながらも、もう何も考えたくないと、枕に顔を埋めた。