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【A3!】恋する劇団

第1章 ◆ありったけの愛を、君に。  碓氷真澄


「―――監督ッ!!!」


「―ッ!!……あ、ますみくん……?」



自分を呼ぶ、焦ったような声にハッと目が覚める。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。


顔を上げ、声の主を探してみれば、すぐ横に心配そうな表情を浮かべた真澄くんが立っていた。

真澄くんが帰ってきているということはもう夕方だろうか?
であれば急がなくてはいけない。
まだ夕飯の仕込みも何も終わっていない。


慌てて立ち上がろうとして、足に力が入らなくて、そのままぺたんと椅子に座り込む。


ああ、最悪だ。彼の心配そうな表情を見る限り、私はうなされていたのだろう。
その上、こんな醜態を見せてしまうなんて…。



「顔色悪いけど、どうしたの」


「あー…ハハ……何でも、ないよ。うん。心配かけてごめんね」


「………」



疑うような視線が痛い。


こういう時、元役者であれば演技でごまかせるんだろうけど、悲しいかな。

私の大根ぶりではどう演技しようともごまかせる気がしない。



「……さっき、うなされてた。」


「…な、何か嫌な夢でも見てたのかも。けどもう内容なんて覚えてないから――」


「俺は」



大丈夫、そう言ってもう一度立ち上がろうとチャレンジしようとテーブルに付いた手は、彼の大きい手に包み込まれた。


立ち上がるために腕に込めた力が抜けていく。


嫌な予感がする。彼の口を封じてしまいたい。

きっと今言おうとしている言葉は、特に今は聞きたくない。



「…ますみく」


「監督を愛してる。何かあったんなら、頼ってほしい」



ああ、間に合わなかった。

そんな言葉、私は聞きたくないのに。
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