第1章 ◆ありったけの愛を、君に。 碓氷真澄
「……それでもいい、傷付けられてもいい。
それでアンタが俺を信じてくれるなら。
俺の気持ちを受け止めてくれるなら、それでいい。
…それとも、監督は、俺のこと嫌い?」
まるで核心を突くような言葉に、一瞬息が止まった。
突き放さなくちゃ、そう思った心は途切れ途切れに嘘の言葉を吐き出す。
「……きら、い」
「…本当に?」
真澄くんがうつむく私の顔を覗き込んでくる。
いつもの真っ直ぐと見つめてくる、全てを見透かすような瞳だった。
その瞳から逃げるように顔を逸らすと、頬をふわりと包み込み、真澄くんは続けた。
「本当に嫌いだったら、監督は最初からハッキリそう言う」
「ッ私の何を知って――」
「知ってる。俺は、ずっとアンタのことを見てた。
これからも、監督だけ見る」
嫌だ。
聞きたくない。
聞いてしまえば、もう。
「……監督、愛してる。」
この真っ直ぐな気持ちから、逃げられないと悟ってしまう。
「すぐに信じてくれなくてもいい 」
また信じたくなってしまう。
あの馬鹿みたいな思いは、もう二度と御免だと思っていたのに。
「俺の側にいて、お願い……」
あぁ、もう、逃げられない。