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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第8章 三叉路の真ん中で





『うわぁ…俗に云う人質って奴ですよね?』

そう茶化す様に云う奏音。
先刻の辻村の話でご機嫌ななめな様だった。


そして、此処まで来れば奏音の得意分野だ。



「アァ?ごちゃごちゃ云ってねぇで黙ってろ。」

『それは…無理ですね。』


そう云って両手を上に上げ、男の腕と自分の身体の間に隙を作り、靱やかな身の熟しで男の腕の中から脱する。


『相手を間違えた様で。』

そうニヤリと笑う奏音。


すると、怒りで顔を真っ赤にした男が包丁を放り投げ、奏音目掛けて襲い掛かって来る。


「糞餓鬼がァァ!」

『…容赦しませんから。』


そう小さく呟いた後は一瞬だった。


奏音は器用に男の後頭部に手包丁を落とし、気を失わせた。




『危なかったぁ……中也に体術習っておいて良かった…。』


そう云ってその場にへたり込む。



「大丈夫か。」

そう云い乍警察官が彼女に駆け寄る。


『えぇ。何とか。
あ、あはは…ごめんなさい。』

大人が揃って鬼の形相で奏音を叱る様に睨み付ける。




「でもさー。彼処でこの子が、大人しくしてたら貴方達は対処できた?」

そんな大人らの中で一人だけ異論を唱えたのが乱歩だった。


『ですよね?!私もそう思います!』

此処ぞとばかりにその意見に便乗する奏音。


当の大人らは黙りだ。


「まぁまぁ。結果オーライって事にしちゃ駄目ですかね?」

今迄大人しかった辻村が口を開く。


「……次からは気を付ける様に。」

警察官は渋い声で告げて、容疑者をパトカーに乗せ、連行していった。




「…帰るぞ。」

綾辻は不満そうな顔でぶっきらぼうにそう云った。


『容疑者、死にませんでしたね。綾辻先生?』

帰り道に奏音は不思議そうに問う。


「あぁ…それはあの、江戸川乱歩って奴が最後の最後に云い当てたからだ。」

『ふーん?じゃあこれからも彼がいたら良いじゃないですか。』


「俺はもう御免だ。あんな餓鬼と仕事はしたくない。」


それきり彼らの会話は途絶えてしまった。



◇◇◇◇


「それで何だ。話とは。」

綾辻は自身の書斎に着くや否や、紙に何やら書き込み始めた。





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