第8章 三叉路の真ん中で
「────と云う事だ。意義反論は受け付けない。」
綾辻はパイプを吹かし乍そう告げた。
「それに関しては僕も同感だね。
そして…犯人は…………君だ。」
警察が到着し、容疑者と思われる人が数名廃ビルに到着してから物の五分も経たないうちにこの状態だ。
『全く解らないや。』
そう呟いて奏音はその辺の大きな石の上に腰を下ろす。
ぼーっと眺めているのも詰まらなくなったのか、奏音は自分の異能で硝子鏡を幾つか生み出し、それを使って地面に絵を書いていた。
『……我ながらやってること幼いなぁ。
これでも十八に成るんだけどなぁ…』
「そうなんですか?!」
急に独り言に反応され、奏音は声も出せぬまま後ろにひっくり返り、口を金魚のようにぱくぱくとさせる。
「済みません。私です、辻村です。」
辻村は奏音の傍に腰を下ろす。
「ところで、ほんとに奏音さん、十八なんですか?」
『ええ。まぁ見た目は十四,五にしか見えないでしょう?』
「はい…言動は大人びてますが、兎に角外見は…ね。」
そう云って辻村は苦笑いをした。
『そう云えば、辻村さんは何故此処に?』
奏音が思い出した様に聞く。
「綾辻先生の監視役なので。」
『あー……特務課ね。』
奏音の声色が急変する。
「…嫌ですか。特務課は。」
『うん。嫌。特に成瀬。』
そう口走り、奏音は慌てて口を押さえるが、辻村は敏感に反応した。
「何故貴女が成瀬さんを知ってるんです?しかも今、成瀬さんは監視対象を逃して謹慎処分中なのに…」
思いがけぬ事を聞き、奏音は心の中で笑う。
『それはご愁傷さまです。
まぁ知ってるのは風の噂って事で。』
そう云って奏音は腰を上げて歩き出す。
「奏音!危ないっ!」
綾辻が叫ぶと同時に奏音が前を向くと、目の前には犯人とおぼわしき人が。
『ええと……何か御用が、?』
微笑を浮かべるが、内心冷や汗だらけだ。
「丁度良い。
此奴を殺されたく無ければ俺に近付くなァァァ!」
男は奏音の首を腕で掴まえ、首元に包丁を当てる。