第8章 三叉路の真ん中で
「奏音さん、黒蜥蜴!敵襲ですっ!」
樋口がそう叫んだ直後、一隻の船が爆破される。
『うわぁ…派手にやるねぇ…
この辺ポートマフィアの武器倉庫あるから辞めて欲しいんだけどなぁ…』
「まぁそれが狙いだろ。行こうぜ。」
そう云って二人は銃を軽く構えて走り出した。
戦況は勿論ポートマフィアの優勢だった。
「くそっ!!!爆ぜろぉぉぉ!」
爆弾を大量に所持した男が奏音を目掛けて幾つもの爆弾を投げる。
『異能力───四鏡、増鏡!』
異能で敵の背後を取り、銃を後頭部に突き付ける。
『…両手を上げて。爆弾は…私に渡して。』
そう云って麻袋を広げる。
「ンな簡単にいくと思ったか?」
男がニヤリと笑い、麻袋の中に爆弾を勢い良く投げ入れる。
「この爆弾は強い衝撃でもタイマーが作動する。
さぁ如何する?
……何故動かない。」
脅しを掛けたつもりだろうが、奏音はぴくりともしない。
『私は死なないからね。貴方は死んでくれても良いけど。』
そう云って不敵に微笑む奏音。
「ふんっ…そう云ってるお前も死ぬんだよっ!」
そう云って男が奏音の腕を掴んだ。
が、余りにも固く、そして冷たいので驚いて手を離す。
「お、お前、何なんだ?!」
『その子は異能。私はこっち。』
爆弾男の視線の先のコンテナの上に奏音は座っていた。
『触ってみなよ。鏡で出来てるからさぁ…』
そう云って奏音は颯爽と身を翻し、その場を去った。
そしてその僅か数秒後。
大量の爆弾が爆発し、男は焼死したのだった。
「…流石奏音。やり口がえげつないな。」
『今のは仕方ないのよ。
…でももっと清いやり口に変えようかな。』
えげつないと云われたのが少し効いたのだろう。その後は異能を使わず、相手の足に銃弾を打ち込むなど、甘い方法でやり過ごしていた。
「俺は良いと思うけどな。
つかポートマフィアにいる時点でえげつねぇよ。」
殲滅完了し、帰路に着く前、立原が何気無さそうに声を掛ける。
立原も自分の一言で奏音を傷付けたと思い、心配していたらしい。
『確かにね…治が私の上司な時点で終わりよね…』
そう云って奏音ははにかんだ。