第8章 三叉路の真ん中で
「芥川せんぱ〜い!黒蜥蜴、到着しましたよ〜!」
そう云い乍樋口が此方に向かって走ってくる。
『龍之介も、明るくて良い部下を持ったね。』
「……五月蝿いだけです。」
芥川は仏頂面で答える。
『それが良いと思える日が来るわ。この世界に生きていれば、あの位明るく無いとやっていけない時もあるもの。』
そう云って奏音はくすくすと笑った。
「黙れ樋口。その五月蝿い口を…」
『ありがとう、樋口ちゃん。そろそろ向かおうか。』
芥川が暴言を吐きそうになったので奏音が遮り強制終了させる。
少し不服そうな顔で芥川は頷いた。
「奏音さんは、異能をお持ちなんですよね?」
『ええ。大した異能じゃないよ。龍之介のが余っ程戦力になるわ。』
「否、奏音さんの異能も強い。僕など…貴方に及びませぬ。」
『んな訳無いでしょ?!』
奏音は驚き乍笑う。
「仲がほんとによろしいんですね。」
樋口は俯き加減でそう云った。
『あー…成程?
樋口ちゃん、後ですこーし話そう?』
何かを察したらしい奏音は軽く樋口に耳打ちをする。
「は、はいっ、!」
少し怯えた表情のまま樋口は返事をした。
港から少し歩いた防波堤で黒蜥蜴と落ち合った。
『広津さん、銀ちゃん、立原。今日はよろしくお願いします。』
そう云って奏音は頭を下げる。
「奏音と一緒か〜!久しぶりだな!よろしく!」
にこにこと笑顔を輝かせる立原は既に両手に銃を所持していた。
「…奏音さん。お願いしますね。」
普段殆ど声を発さない銀も、奏音に対してはちゃんと挨拶をしていた。
「今回の指揮官は芥川さんだと聞いてるけど…奏音、合ってるのか?」
敵襲が来てから動くので、奏音が暇にしていると、立原が傍に来て声を掛けた。
『合ってるよ。久々の任務で指揮官は中々大変だからね。龍之介のが上手いし。』
「いやぁ…奏音の腕前を見てる人は謙遜にしか聞こえないと思うけどな…」
立原は不服なのか、ごにょごにょと口籠もる。