第8章 三叉路の真ん中で
「私は眠くないよ。でも中也はお子ちゃまだから眠いんじゃない?」
態々挑発する様な言葉と口調を選ぶ太宰。
「ンだと?!俺はお子ちゃまじゃねェ。
つか俺も眠くはねェ。」
「奏音、眠いなら寝た方が良い。明日は朝から何かあったのだろう?」
『…うん。龍之介と任務…うぅ…足引っ張りそう…』
「手前が?ンな訳ねェだろ。芥川も至らねェとこは有るんだ。それは二人でカバー出来りゃ良いだろ。」
そう云って中也ははにかんだ。
「おぉ!珍しく中也がまともな日本語喋ったよ!」
「まァた手前…云わせておけばッッ!!」
『解った!寝る!二人共、おやすみっ!』
二人の取っ組み合いは見たく無い、と云わんばかりの遮り様で奏音は寝台に潜り込んだ。
その後二人は奏音を起こさぬ様、忍び足で執務室から出て行ったのだった。
◇◇◇◇
『…龍之介ー。何処に居るの??』
奏音は一人本部ビル内をさ迷っていた。
『しまった…ちゃんと見て着いて行くべきだった。』
そう。奏音は極度の方向音痴なのだ。
自覚済みなので、今迄は人の後ろに着いているばかりだったが、芥川相手ではそうも上手くはいかない。
なんせ彼は一人ですたすたと歩いて行ってしまうのだから。
「奏音さん?何をしてるんです?」
『樋口ちゃんっ!助けて!龍之介のとこに行けない…』
余り回数話した事が無い樋口だが丁寧に奏音に応じてくれる。
「多分芥川先輩は此方だと思いますよ…
あ、いたいた。芥川先輩〜!」
『……ありがとう、?
あ、樋口ちゃん、同じ任務じゃなかったっけ?』
「あ…それはですね……
実は、芥川先輩に奏音さんを探して来る様云われたんです。」
恥ずかしい暴露話に奏音は顔を真っ赤に染める。
『ふぇっ?!私を?!ごめんっ…!
でも最初はそんな感じ無かったよね?』
「はい。余り全面的に迎えに来ました!ってすると気まずいかな、と。」
樋口なりの配慮だったらしい。
『ありがとう!助かった、と思う!』
そう云って奏音ははにかんだ。