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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第8章 三叉路の真ん中で






◆◆◆◆



自らの過去を喋り終えた奏音はゆっくりと深呼吸をした。


その目には泪の水溜まりを作り乍。




『その後の事は分からないの。

確か治によれば私、何ヶ月も目を覚まさなかったらしいし…


しかも、その爆発やごたごたで、業や有島さんとも離れ離れになっちゃったの。』

目から大粒の泪を零し乍そう告げた。



「………ありがとう。ありがとうな…」

中也も目に泪を浮かべていた。


「手前にとって苦しくて、何処かへ追いやりたい記憶だろうに、俺にきちんと話してくれてありがとう。


ンで、離れ離れになった業って奴と、有島って奴を手前は探したいんだな?」

中也はすすり泣きを続ける奏音を抱き締め乍、背中を摩った。



『そう。二人に会って話したら、もっともっと記憶は繋がる筈なの。


正確に云えば、施設での数年と、如何して二人はポートマフィアから姿を消したか、を聞きたいの。』


「施設での数年は全くか?」



『うん。入って数日と、出ていく日しか記憶が無いの。


多分……異能の練習を始めたくらいからの記憶が無いのよ。』


「そうか……


あ、一つ気になるっつーか解んねェとこあるんだが聞いても良いか?」


軽く目を伏せて問う中也。


『良いよ。多分…何故中也がポートマフィアに入った時に私が居なかったか、だよね?』


「あァ。解ってンなら早ぇな。
手前は目を覚ましてから何してた。」


『数年してポートマフィアを抜けたよ。
最初は部下の教育や色んな事で忙しくしてたから余り考えない様にしてたけど、柚音や業や有島さんを失って、私がポートマフィアに居る意味を見い出せなくなっちゃったからね。』


「だが、太宰と付き合ってたンじゃねェのか?」

『付き合ってた、よ。でも…治には頼れなかった。



柚音が、治を好きだったから。』

「矢ッ張りな。手前の話振りからそれは解ったぜ。だから手前はずっと負い目を感じ乍太宰と接してる。違うか?」


中也は全て解っている、と云わんばかりの表情をして奏音の頭を撫で続ける。




まるで、割れ物の硝子を丁寧に扱うかの様に。




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