第8章 三叉路の真ん中で
「…森さん、入るよ。」
太宰はノックも程々に首領室の中に入る。
すると、中には紅葉、業、有島の三名がいたのだ。
「奏音!大きくなったのぉ!」
紅葉は愛でる様に奏音の頭を撫でる。
『えへへ、姐様久しぶり。
中々顔出せなくてごめんなさい。』
久々の再会を懐かしんでいると、鴎外は何やら大きな電子画面を取り出した。
そして、小さな咳払いをして話し始めた。
「不穏な噂が横行してるとの話を耳にしてね。ポートマフィア内でも抗争が起こる可能性が考えられるから幹部で話を合わせようと思う。」
『…幹部、?私、幹部じゃないですよ?』
「否々、君は首領の娘として噂の渦中に居るじゃないか。」
『あ…そっか。』
太宰の適切な突っ込みに場が和む。
その後、トントン拍子で作戦が決まり、予定時間よりも早めの解散となった。
『私は、治と居れば良いのね。』
奏音と太宰は帰り道に自分らの作戦の振り返りをしていた。
「そうだね。
まぁ…君は私に守られて居ればいいさ。
─────この先も一生、ね。」
『お、治…?』
「奏音。私は君に惹かれている様なのだよ。だから…奏音さえ良ければ、これからも一緒に生きていかないかい?」
唐突な太宰からの告白に驚きを隠せない奏音。
『……私はね、ここ数年治に沢山救われてきた。その度に、胸がぎゅって苦しくなって、その感情の正体が解んなかった。でも、今解った。
────私も治が好きだよ…っ!』
奏音は固く目を瞑って太宰の腰に抱き着く。
「ありがとう。」
太宰は甘く優しい声でそう呟いたのだった。
◆◆◆◆
─────ジリリリリリッッッ…
寒さが身に染みる真冬。
深夜のポートマフィアビル内に警報機がけたたましい音を響かせる。