第8章 三叉路の真ん中で
───月日は流れ、奏音が十四歳の頃。
彼女がポートマフィアに加入してから四年の時が経とうとしていた。
太宰と奏音は肩を並べてポートマフィア本部ビル内の長い廊下を歩いていた。
『……最近不穏な噂があるんだけど、何か手掛かり無い?
治。』
「うーん。私も調べては居るのだけどね…
どうしても手に入れたいなら電網破りを雇うのが早いかもしれないねぇ…」
太宰も奏音もその不穏な噂に踊らされていた。
「…矢張り私は奏音の父親は森さんじゃないと思うのだよ。」
その不穏な噂とは、奏音は森鴎外の本当の娘では無い。と云う噂だった。
鴎外は依然否定しているが、奏音は完全に父が鴎外だと信じている訳では無かった。
『理由は…あっての?』
「そう。どうしても私はあのDNA判定の結果を信じられなくてね。」
『もう一度DNA判定をしたら解る、なんて事あるかな?』
奏音も自分の問題なので真剣に考えている。
「解るとも。でも森さんが拒否をしたら出来ないのだよ。機械は森さんの手の中だ。
ヨコハマ市内の病院にポートマフィアがかかれるとも思えない。まず身分証明書が無い。
……奏音はどちらだと思うんだい?」
『うーん……どっちなんだろう…』
奏音は眉間に皺を寄せ、考え込んでいる様だった。
「なぁに難しい顔してるの?お姉ちゃん!」
突如、下を向いていた奏音の顔を覗き込む様にして柚音が声を掛けた。
『う、うわぁっ!吃驚するじゃん…』
「えへへ。吃驚するだろうなって思ってやってるから良いの!
ねぇ太宰さん、何の話してたの?」
柚音は太宰をじっと見詰めて問う。
「ん?難しい話。
ほら、奏音ちゃん。森さんの所に行くよ。」
太宰は柚音を軽くあしらい、その場を後にした。