第7章 聖なる夜の恋人たちは。【聖夜企画】
これは、太宰と奏音が付き合ってから迎える初めての聖夜のお話。
◆◆◆◆
『えー、そうなんだ………』
奏音は不服そうな顔をする。
「申し訳ないね。文句なら森さんに、ね。」
太宰は資料をペラペラと捲り乍そう応える。
『そうだけど………
なんでよりによって聖夜に遠征…』
「森さんの意地悪じゃない?私たちが一緒に居られない様に。」
『…適当に答えないでよ……
もう戻るね。』
そう云って、奏音は部屋を出て行った。
「…そりゃあ私も君とクリスマスくらいゆっくり過ごしたいと思ったよ………」
太宰の言葉は誰に聞こえる訳でも無く、無残にも消えていった。
◇◇◇◇
「じゃあ行ってくるから。」
『気をつけてね。』
12.25の早朝。
太宰は敵組織を殲滅すべく、遠征に出かけて云った。
奏音は奏音でやる事が与えられ、それなりに忙しなく動いていた。
昼休憩になり、奏音は直ぐ様電子端末を手に取り電話を掛ける。
「…もしもし。奏音?」
『そう。治大丈夫、?』
「何とか、ね。まぁ奏音は気にしないで頑張ってよ。」
奏音は、珍しく太宰側が劣勢だとの報告を受け、心配で電話をしたのだ。
『気にしないでって……
出来るわけ無いでしょ!心配だよ!
頑張って………あと……死なないで。』
最後の一言は絞り出す様だった。
◇◇◇◇
太陽が顔を隠し、寒さが一層深まる頃、奏音は一人執務室の椅子に座っていた。
『…治………無事で、いて…。』
「無事だけど?」
真っ暗な部屋の電気を付け乍、治が現れたのだ。
『……ふぇっ……治、?
あ…幻覚か………』
「幻覚じゃ無いのだけど。」
唇を尖らせて治は奏音の頬を両手で包む。
『…つ、冷たぁっ、!!』
余りの冷たさに奏音は軽く悲鳴をあげる。
「嫌だったかい?」
『嫌じゃ無い!帰って来てくれるなんて…』
奏音の目からは泪が溢れていた。