第1章 出会いと始まり
「それで、君の話は?」
綾辻は脚を組み真剣な面持ちで少女を見る。
『……ポートマフィアはご存知ですよね?』
少女もまた真剣な面持ちで話を切り出す。
「し、失礼しま〜す……」
辻村は腰を低くし乍彼等の元に飲み物を置く。
二人の常ならぬ雰囲気に圧倒されているのだろう。辻村の頬には一筋の汗が見受けられた。
『彼等…ポートマフィアが"直接"私の領域まで侵入してきたのです。』
少女の言葉に驚き目を見開く綾辻。
「…あの、鏡張りの空間に、か…?」
『ええ。真逆そんな事が、と私も最初は思いましたが、あの太宰治が居たので直ぐに納得はいきましたよ。』
少し溜息を漏らしつつも話を進める少女。
その間綾辻は相槌は打てども何か言葉を発する事は無かった。
「成程、な。確かにそれは興味深いが…
一体君は何者だ。」
長年の疑問だったのだろう。漸く聞けた、という安堵感が漂っていた。
『私は………唯の特一級危険異能者です。』
そんな緊縛した状況の中、突如悲鳴が響いた。
「辻村君、今度は何を………」
綾辻が音の出処に目を向けると、黒服の男等が部屋の勝手口に立っていた。
「ほぉ…君のお迎えなんじゃないのか?」
そう云って少女を見る。
『……みたいね…申し訳ないわ。部屋の修理代くらいは持たせてね。』
そう告げて少女は黒服の男等の中心へと足を進める。
『…大方森医師の命令だろうけど…帰って頂いても宜しくて?貴方達に私は用が無いのだけど。』
淡々とした感情の抜けた声が部屋に響く。
その様子を後方から黙って見つめる綾辻と辻村。
「あ、綾辻先生…彼女、何者なんですか?」
恐る恐る尋ねる辻村。幼い少女が一人で黒服の男等に向かって行く姿が信じられないようだった。
「……俺と同じ特一級異能力者だ。
とは言っても、彼女の異能力がどんな物なのか詳しくは俺も知らん。」
その事に関しては綾辻もお手上げと云った処だった。なんせ長年の謎であったのだから。
『…そう……帰って頂け無いのなら…強制送還、とでも致しましょうか。
異能力───四鏡、大鏡』
そう彼女が告げると共に、黒服の男等は消え去っていった。