第6章 過去に押し流されて
「……柚音。」
紅葉は残された茶室で独り呟く。
すると、柚音が現れたのだ。
「複雑です。お姉ちゃんが生きてて良かったけど、異能力者なら生きてて欲しく無かった。」
「それは絶対に奏音には云ってはならんぞ?」
紅葉はおっとりした表情を浮かべ乍も、少しキツい口調でそう告げた。
「勿論、云う積りはありません。
でも…………
もし、お姉ちゃんがポートマフィアの人を傷付けたら、唯では置かないかな。」
そう微笑んだ柚音の笑みには影が刺していた。
◇◇◇◇
※この先に太宰の過去の捏造がございます。予めご了承ください。
「有島さんと太宰くーん。奏音連れて来ましたー。」
業は間延びする様な声でそう告げる。
「ん、ありがとう。また会ったね、奏音ちゃん。」
太宰はにこにこし乍手をひらひらと振る。
「太宰くん、余り良くないよー。そう云うの。」
業は嫌そうな声を出す。
「太宰くん………あぁ、そうか。
君たち師弟関係逆転したんだもんね。」
そう云って有島はお腹を抱えて笑い出す。
「そうなのだよ。もうしてやられたよ。」
太宰も不服そうな声を上げる。
「……真逆君が津島業だったなんて。」
「ははっ。黙ってた訳じゃあ無いんだけどね。唯、云う機会が無かっただけさ。」
そう云う業はニヤリと口端を上げた。
『ん、?業と太宰さん、どっちが師匠で弟子なの?』
「僕が師匠で、太宰くんが弟子〜。」
業はこれ見よがしに太宰を一瞥する。
頭が混乱して整理出来ない奏音は頭上に疑問符が見えても可笑しく無い程困惑していた。
「説明するよ。
太宰家は津島家の分家なんだ。で、僕が津島家の長男。だから、年齢やキャリアに有無を云わせずに津島家が師匠になるんだよ。」
『…なんだか複雑なんだね。
余り喧嘩しないでね、?』
奏音は二人の間の不穏な空気を読み取ったのだろう。不安そうな顔をしてそう云った。
「大丈夫さ。奏音ちゃんは気にしなくて良いのだよ。」
そう云って太宰は笑った。