第6章 過去に押し流されて
◆◆◆◆
「こうして私はポートマフィアに入ったの。
……実際にお姉ちゃんを救い出せた訳じゃないけど…ね。」
悲しそうに目を伏せて柚音は告げる。
『それでも柚音は私を助ける為にここ迄頑張ってくれたんでしょ?それだけで嬉しいよ…』
奏音は泪を目に一杯浮かべて精一杯笑った。
「お姉ちゃんは、大丈夫だった?
何か変な事されなかった、?」
『………』
押し黙ってしまった奏音を見て、柚音は不安そうな顔をする。
「され、たの、?何されたの?」
『………い、異能力実験。』
「…じゃあ、お姉ちゃんは異能力者なの?」
少し声のトーンが落ちた事に気付き、奏音は少し肩を震わせる。
『うん…そうだよ。』
「凄いね!見せてよ!」
先刻とは打って変わった明るい声に驚きつつも、奏音は異能力を見せた。
『…これが、四鏡の一つ、増鏡。
自分の身代わりが作れるの。』
「へぇ?じゃあお姉ちゃん、これから沢山お仕事来るね!」
そう云って柚音は席を立ち、その場を離れた。
最後の声は、
泪で湿った様にも聞こえたのだった───。
『姐様、私…』
奏音は縋る様な目で紅葉を見詰める。
「…仕方が無いじゃろうな。後に明かされることではあったが…」
紅葉も二人の複雑な状況に言葉を詰まらせる。
「云って良かったと思いますよ。」
不意に茶室の扉が開き、そう誰かの声がした。
「……なんじゃ、そなたか。暇にでもなったかぇ?」
紅葉の頬が少しだけ緩む。
「否々、訓練あるんで、奏音のお迎えです。ほら、行くよ。」
『業!迎えに来てくれてありがとう。良く此処に居るって解ったね?』
そう、業だったのだ。
「あぁ。有島さんと太宰さんに聞いた。
二人もそろそろ来る様だから、向かおうか。」
奏音と業は揃って頭を下げ、その場を後にした。