第6章 過去に押し流されて
「さてと。訓練を始めよう!」
有島は手を叩き、空気を変えようとする。
そして、奏音は有島と目を合わせ、こくんと頷く。
『異能力────四鏡、増鏡!』
奏音の声に合わせて、奏音と有島の分身が幾人も現れる。
「へぇ!他人の分身まで出せる様になったの。」
業は感嘆した声を上げる。
「矢ッ張り奏音ちゃんは才能があるんだねぇ…」
太宰も奏音の腕を褒め始める。
『否々、有島さんの教え方が上手いんだよ。』
奏音は照れ乍そう応えた。
『これも出来るようになったんです。』
そう云って奏音は水滴程度の大きさの硝子鏡を宙に浮かべた。
『これで攻撃も出来て…』
そう云い乍有島に向かって硝子鏡を飛ばす。
「ええぇ!僕に?!」
有島は驚き乍も、自らの異能を駆使して攻撃を凌いだ。
「…業くん。可笑しくないかい?彼女、上手く出来る様になるのが早すぎる。」
太宰は怪訝そうな顔をして業に尋ねる。
「あぁ…それは、奏音が施設でも異能の練習してたからだよ。」
「あ、そう云う事ね。」
太宰はあっさりと納得して、奏音の方へ歩いて行った。
「……まぁ、それだけじゃ無いけど。」
業の呟きが聞こえていた者は誰一人として居なかった。