第6章 過去に押し流されて
有島が無事に奏音を連れ出し、鴎外と共にポートマフィアの本部ビルに降り立った。
「此処がポートマフィア…」
業は宙まで届きそうな程高くそびえ立つビルの上を見上げていた。
「そうだとも。入り給え。
首領室に案内しよう。」
重厚感のある部屋の中に招かれた三人は自然と背筋が伸びる。
『あ、貴方が私の本当のお父さん…』
奏音は呆然とし乍話を聞いていた。
「あぁ。だが私は同時に君の首領でもある。他の人の前では首領と呼ぶように。」
そう念押しして、その日は解散になった。
◇◇◇◇
数週間後、奏音は運命の出会いを果たす事になる。
紅葉に連れられ、本部の長い回廊を歩いている時だった。
向かいから、背の高い包帯だらけの細身の少年と、髪を一つに結った歳の変わらなさそうな少女が歩いてくる。
「……え。」
すれ違いざまに、少女が声を発す。
「………お姉ちゃんっ?!」
少女の声に驚いて奏音が振り向くと、確かにそこには何年も顔を合わせて居なかった妹の面影があった。
『ゆ、柚音、?ほんとに柚音なの?』
そう云い乍ふらふらと奏音は少女に歩み寄る。
「うんっ…柚音だよ。
お姉ちゃん…生きてて良かった、!」
そう、奏音と柚音はポートマフィアで再会を果たしたのだ。
「…柚音ちゃん。彼女は知り合いかい?」
細身の少年こと、幼き頃の太宰が声を掛ける。
「はい。私の姉です。幼い頃に生き別れになった…」
柚音は泪ぐみ乍答える。
「…おや、太宰じゃないかぇ?奏音がちっとも着いて来ないと思ったら…」
そう云い乍紅葉が奏音の方へ歩いて来る。
「姐さん…ご無沙汰です。どうも柚音ちゃんとこの子が知り合いだったらしくて…」
太宰が軽く状況を説明すると、紅葉は顔を輝かせて
「そうかぇ!ちと女だけで茶会でも開かんかね?
奏音と柚音殿も話す時間が欲しいじゃろ?」
紅葉の粋な計らいにより、二人は茶会に参加することになったのだった。