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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第5章 追憶と過去





一方業は、自分と歳が殆ど変わらなさそうな少年と対峙していた。


「君の名前は?」

「貴方が名乗って下されば僕も名乗ります。」

「そう硬いこと云わずにさぁ?」

少年はそう云ってグレーの髪を弄ぶ。



「…解りました。僕の名前は業。
貴方は?」

遂に押し問答に負けた業が先に名乗る。


「僕は有島。以後よろしく。」

そう云って有島は手を前に差し出した。

業は無言で握手に応じる。


すると、有島はそのまま業の手を引っ張って、部屋の奥の扉の中に入って行った。




「君さ、No.1707と知り合い?」

「な、No.1707…?」

聞き慣れぬ数字に業は耳を疑う。


「あぁ、えっと…確か名前が……」

そう云い乍有島は分厚いファイルを捲っていく。


「ん、あったあった。
奏音ちゃん、って子。」

業はその名前にピクっと反応する。


「その感じだと知ってるみたいだね。

…そんな睨まないでよ。この後君は彼女に会えるんだから。」

有島はニヤリと笑い乍告げる。


「……本当、ですか、?」

「うん。あ、でも今日は無理かなー?
ケイくんから連絡無いし…」

そう云って有島は窓の外を眺める。
この部屋に唯一あるのが窓だ。

他には何も無い。机も、椅子も。



「あの…!
何故この部屋には窓しか無いんでしょうか?」

業は勇気を振り絞って問う。


「あー、それはね……

僕が脱走しないように、だって。」

「え、?」

「驚いた?そう。僕ここの施設の人なの。」

驚きの余り口をぱくぱくさせる業。


「あははっ。矢ッ張り君のこと気に入った。
これから僕と一緒に居ようね。

僕から逃げるのは禁止。良いね?」

「え、あ、はい……」

業は戸惑い乍も笑顔を向ける。



暫しの沈黙が続き、業は気まずそうな顔をする。
そして、突如有島が口を開く。

「…ケイくん、そろそろ来るねぇ…」





「有島く〜ん!おいらだよ〜!」

女性の様に高く、明るい声が響く。


「はいはい。君は何時もテンション高いね〜」

そうは云い乍も、有島の口元も綻んでいる。



「この子の終わったよ〜う。
………彼は誰?」

ケイは可動式寝台を押し運び乍部屋に入ってくる。






寝台の上で眠っている人を見て、業は驚愕する。



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